本記事は国税庁の公表資料と条文に基づく一般的な情報の整理であり、個別の税務相談ではありません。個別のご質問にはお答えしていません。社会保険の扶養は税とは別制度で、本記事の対象外です。ご自身の判断の前に税務署または税理士にご確認ください。

2026年(令和8年)分から、親の扶養に入っていられる子の、所得の線が上がりました。合計所得58万円以下から62万円以下へ、給与だけなら年収123万円以下から136万円以下へ。数字の出どころは、国税庁の「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」のp.2の表。

ややこしいのは日付です。この改正の施行日は2026年12月1日で、10月に検索すると、「12月1日から」という書き方ばかり出てきます。すると、では11月までは古い線なのか、と読めてしまいます。そこを分けて書いているのが、国税庁の「令和8年度税制改正(所得税の基礎控除の引上げ等関係)Q&A(令和8年5月)」のQ1-1です。

12月1日は施行日で、線そのものは2026年の1年に効く

Q1-1はこう書いています。

令和8年度税制改正による次の①から③までの改正事項については、令和8年12月1日に施行され、令和8年分以後の所得税について適用されます。 ① 基礎控除の引上げ ② 給与所得控除の最低保障額の引上げ及びそれに伴う「年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」の改正 ③ 扶養親族等の所得要件の改正

施行日は12月1日ですが、適用されるのは、2026年分の所得税です。2026年1月から12月までの1年分を、62万円の線で判定します。12月1日に線が切り替わる扱いは、ありません。

12月1日という日付が効いてくるのは、毎月の給与から税を引く、事務のほうです。あらましのp.2にはこうあります。

令和8年分の給与等の源泉徴収事務においては、上記⑶の改正は、令和8年12月1日以後に支払う給与等から適用されますが、この改正により新たに扶養親族等の要件を満たすこととなった親族等に係る扶養控除等の適用を受けるために「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」等の提出が必要となります。

親の勤務先が毎月使う税額表の「扶養親族等の数」に、新しく扶養に入った子を入れられるのは、12月1日以後に支払う給与から。11月30日までに支払う給与では、入れません(Q2-1の注)。そのぶんは、12月の年末調整で、計算し直して精算されます。

学生が親に伝える数字は2つだけ

1つめは、2026年1月1日から12月31日までに支払を受けるバイト代の合計(見込み)です。年の途中で辞めた店の分も、掛け持ち先の分も、足します。基準は「支払われた日」で、働いた月は無関係。

2つめは、そこから給与所得控除74万円を引いた金額で、これが合計所得です。給与所得控除の最低保障額は、65万円から74万円に上がっています(あらまし p.1 ⑵)。Q2-4は、特定親族特別控除申告書について、「改正後の給与所得控除額を適用して算出された合計所得金額に応じて、特定親族特別控除額を正しく記載する必要があります」としています。引くのは74万円で、65万円ではありません。

親の側の区分は、この合計所得で決まります。19歳以上23歳未満(2026年12月31日時点)の場合は、次のとおりです。

子の合計所得 給与だけなら年収 親側の控除
62万円以下 136万円以下 特定扶養親族として扶養控除63万円
62万円超 85万円以下 136万円超 159万円以下 特定親族特別控除 63万円
85万円超 90万円以下 159万円超 164万円以下 61万円
90万円超 95万円以下 164万円超 169万円以下 51万円
95万円超 100万円以下 169万円超 174万円以下 41万円
100万円超 105万円以下 174万円超 179万円以下 31万円
105万円超 110万円以下 179万円超 184万円以下 21万円
110万円超 115万円以下 184万円超 189万円以下 11万円
115万円超 120万円以下 189万円超 194万円以下 6万円
120万円超 123万円以下 194万円超 197万円以下 3万円

(あらまし p.2 の「(参考)改正後の配偶者特別控除額及び特定親族特別控除額の表」の右端の列)

136万円を1円超えても、控除が63万円からゼロに落ちることはありません。159万円までは63万円のまま残ります。自分の年収は、どの行に当たりますか。答えは、学生の「年収の壁」2026年分の計算ページに年収を入れると出ます。「103万の壁」「123万の壁」「160万の壁」が2026年分でどこへ動いたかの一覧は、同ページの壁の一覧にまとめてあります。

親が出す紙は2種類、出す先は親の勤務先

紙の正式名称は、Q&Aの凡例に、載っています。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:子の合計所得が62万円以下のとき、扶養親族の欄に書く
  • 給与所得者の特定親族特別控除申告書:子の合計所得が62万円超123万円以下のとき、9段階のどの行かと控除額を書く

扶養控除等申告書は、所得税法194条1項が、「その給与等の支払者(その支払者が二以上ある場合には、主たる給与等の支払者)から毎年最初に給与等の支払を受ける日の前日までに」提出するものと定めています。年の途中で内容が変わったときは、同条3項が、「その異動を生じた日後最初に給与等の支払を受ける日の前日までに」異動の内容を書いた申告書を出す、としています。

今回の改正で新しく扶養の対象になった子を書き足すときについて、Q2-1はこう書いています。

この改正により新たに扶養控除等の対象となる扶養親族等を扶養控除等申告書に記載する際には、扶養控除等申告書の「異動月日及び事由」欄に「令和8年12月1日 改正」などと記載してください。

提出の時期は、原則として、12月1日以後最初に給与の支払を受ける日の前日まで。同じQ2-1には「年末調整を行う時までに申告書の提出があれば、その申告に基づいて年末調整を行うことができます」ともあります。逆に、11月中に書類を配る勤務先もありますが、Q1-2は12月1日前に提出を受けても、「差し支えありません」としています。

最後の給与が11月30日以前だった人は年末調整に乗らない

Q1-3は、年の途中で亡くなった人や、海外転勤で非居住者になった人を例に、年末調整の時期の考え方を書いています。年末調整は「給与の支払者がその年最後に給与の支払をする際に行うこととされています」ので、2026年分の最後の給与を11月30日以前に支払った場合、その年末調整には改正後の控除等が適用されません。その場合は、確定申告等で適用を受けることになります。

社会保険の扶養は、この話とは別の制度です

ここまでは、税の話。健康保険の被扶養者の線(19歳以上23歳未満は年間収入見込み150万円未満、それ以外は130万円未満)は、判定の基準も、金額も違います。同じ年収を入れて、税の表と社会保険の表を並べて出すところまでは、年収の壁の計算ページでやっています。

私は自分の2026年のバイト代の合計を、支払日ベースで数え直して、親に渡すつもりです。書くのは金額と日付だけで、どの紙をどう書くかは、勤務先の担当者が決めることです。


出典(いずれも2026年9月16日に原典を開いて確認)

PR・8年版 はじめての人にもよくわかる 年末調整の仕方と1月の源泉徴収事務(岡本勝秀編、日本法令、2026年10月21日頃発売)

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本記事は2026年9月16日に原典を開いて確認した公表情報(令和8年度税制改正まで反映)に基づきます。税務相談は税務署の相談窓口または税理士へ(税理士法2条・52条により、他人の求めに応じて税額の計算などの相談に応じることを業として行えるのは、無償の場合も、税理士と税理士法人に限られます)。詳細は免責事項をご覧ください。