本記事は日本年金機構・国税庁の公表資料に基づく一般的な情報の整理であり、個別の年金・税務の相談ではありません。個別のご質問にはお答えしていません。承認されるかどうかを決めるのは日本年金機構です。ご自身の判断の前に、お住まいの市区町村の国民年金の窓口または年金事務所にご確認ください。

日本国内に住むすべての人は、20歳になった時から国民年金の被保険者になり、保険料の納付が義務づけられています。日本年金機構の「国民年金保険料」のページによると、令和8年度の保険料は1か月あたり17,920円です。1年分にすると215,040円(17,920円×12)。バイト収入で暮らす学生には小さくない額で、そのための制度が学生納付特例です。

この制度の所得基準は「128万円」と書かれていますが、128万円は所得の額で、バイトの年収とは別の数字です。給与の年収に直すといくらになるのかを、前年の所得で見る仕組みと合わせて、原典の式で計算しました。

基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」

日本年金機構の学生納付特例のページは、対象を「学生納付特例を受けようとする年度の前年所得が一定額以下の学生」とし、所得基準(申請者本人のみ)を次の式で示しています。

128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

家族の所得は問われません。同じ機構の免除等の申請が可能な期間のページにも、「学生納付特例については、配偶者および世帯主の所得審査はありません」とあります。見られるのは、本人の前年所得だけ。

学生本人に扶養している親族がいなければ、式の第2項は0円です。第3項の社会保険料控除等は、給与から引かれた雇用保険料などの分だけ基準を上げます。以下の計算では、扶養親族等も社会保険料控除も0円とした下限の目安を出しています。

給与の年収に直すと、約194万円

所得は、収入から必要経費を引いた額です。給与の場合は、収入から給与所得控除を引いた額が給与所得になります。国税庁のタックスアンサーNo.1410「給与所得控除」の式を、年収x万円に当てはめます。

令和7年分では、年収190万円超360万円以下の給与所得控除額が「収入金額×30%+8万円」です。所得が128万円になる年収は、x−(0.3x+8)=128 を解いて x=194.29(万円)。令和2年分から令和6年分も、180万円超360万円以下はこの式なので、同じ約194万円です。

令和8年分と令和9年分は、給与所得控除の最低保障が74万円に上がりました(国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」p.1 ⑵)。年収74万1,000円以上219万1,000円未満の給与所得は、年収から74万円を引いた額と定められています。128+74=202(万円)。

申請する年度(4月〜翌3月) 審査対象の前年所得 前年の給与所得控除 給与だけの年収の目安
令和7年度分(2025年4月〜2026年3月) 令和6年中 年収×30%+8万円 約194万円
令和8年度分(2026年4月〜2027年3月) 令和7年中 年収×30%+8万円 約194万円
令和9年度分(2027年4月〜2028年3月) 令和8年中 年収から74万円を引く 202万円

前年所得の対応のうち令和8年度分までは、機構のページの表(令和8年4月時点)から取っています。令和9年度分の行はその表になく、所得基準の128万円が令和9年度も変わらないとした場合の目安です。令和8年度分は令和7年中の所得で審査され、対象は令和8年4月から令和9年3月。今年(2026年)のバイト代が審査に使われるのは、令和9年度分の申請、つまり2027年4月からです。

年収は「給与だけの場合」の目安で、国税庁の所得の計算は660万円未満なら年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表(所得税法別表第五)で行います。そのため194万円は、端数の出る概算。特定支出控除や、給与以外の所得が加わる場合は、表の金額から外れます。

納付・学生納付特例・未納で、受け取れる年金はこう違う

猶予された期間は、保険料を払った期間と同じ扱いにはなりません。日本年金機構の令和8年度版パンフレットの表を、そのまま並べます。

  老齢基礎年金の受給資格期間 老齢基礎年金の年金額 障害基礎年金・遺族基礎年金の対象期間
納付 算入される 反映される 算入される
学生納付特例 算入される 反映されない 算入される
未納 算入されない 反映されない 算入されない

障害基礎年金の令和8年度の年額は、1級が1,059,125円、2級が847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの人の額)。パンフレットは、学生納付特例の手続きをしないまま保険料も納めずにいると、障害基礎年金を受け取れなくなる可能性があると説明しています。

猶予された期間の年金額は、そのままでは増えません。承認を受けた期間は10年以内なら保険料をさかのぼって納める追納ができ、承認を受けた年度の翌年度から数えて3年度目以降に追納する場合は、当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が付きます(機構のページ)。機構は「経済的に余裕がある場合は、保険料を納付するほうがお得です」とも書いています。

申請の期限は2年1か月まで

申請は、原則として4月から翌年3月までの1年度分を1枚の申請書で出します。さかのぼれるのは、保険料の納付期限から2年を経過していない期間で、申請時点から2年1か月前までです。機構のページの表から、令和8年度中に期限が来る月のうち、2026年10月以降に期限が来るものを抜きます。

保険料の月 納付期限 申請期限
令和6年9月分 令和6年10月31日 令和8年10月30日(金)※
令和6年10月分 令和6年12月2日 令和8年12月2日(水)
令和6年11月分 令和7年1月6日 令和9年1月6日(水)
令和6年12月分 令和7年1月31日 令和9年1月29日(金)※
令和7年1月分 令和7年2月28日 令和9年2月26日(金)※
令和7年2月分 令和7年3月31日 令和9年3月31日(水)

※は、納付期限の2年後の日が休日(令和8年10月31日は土曜、令和9年1月31日と2月28日は日曜)にあたる月です。窓口や郵送で手続きするときは、直前の営業日までに申請書が受理されている必要があります。

数字を確かめるときの手順

申請の前に確かめられるのは、前年の所得です。源泉徴収票の「支払金額」から、該当する年の給与所得控除を引いた額が、基準の128万円以下かどうかです。扶養親族等と社会保険料控除等があれば、その分が基準に足されます。学生の「年収の壁」2026年分の計算ページは、同じ年収で税と社会保険の線を並べるものです。保険料の推移は国民年金保険料の推移に置いてあります(1990年度8,400円から、2026年度17,920円)。

この記事は、申請するかしないかを勧めるものではありません。出したのは、機構の式に年収を入れたときの目安と、猶予した期間が年金でどう扱われるかの表。


出典(いずれも2026年10月10日確認)

日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」(更新日2026年8月3日・所得基準・追納・老齢基礎年金との関係) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150514.html

日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」(更新日2026年8月3日・年度と前年所得の対応・申請期限の表) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/menjo/20150402-01.html

日本年金機構「国民年金保険料」(更新日2026年4月1日・令和8年度の保険料月額17,920円) https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html

日本年金機構「学生納付特例制度 <ポイント> 令和8年度版」PDF(前年所得のめやす・受給資格期間と年金額の表・障害基礎年金の年額) https://www.nenkin.go.jp/service/pamphlet/kokuminnenkin.files/point.pdf

国税庁 タックスアンサー No.1410「給与所得控除」(令和8年4月1日現在法令等・令和7年分、令和2年分から令和6年分、令和8・9年分の給与所得控除額) https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm

国税庁「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」PDF(給与所得控除の最低保障74万円) https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/2026kaisei.pdf


本記事は2026年10月10日時点の公表情報に基づきます。税務相談は税務署の相談窓口または税理士へ(税理士法2条・52条により、他人の求めに応じて税額の計算などの相談に応じることを業として行えるのは、無償の場合も、税理士と税理士法人に限られます)。年金の相談は年金事務所へ。詳細は免責事項をご覧ください。