学生の「年収の壁」は2026年分でまた変わった — 103万でも123万でもなく、バイトは136万・178万。国税庁のページすらまだ古い
本記事は国税庁の公表資料に基づく一般的な情報の整理であり、個別の税務相談ではありません。社会保険の扶養(いわゆる106万・130万円の壁)は税金とは別制度で、本記事の対象外です。ご自身の判断の前に税務署・税理士・(社会保険は)ご加入の健康保険にご確認ください。
「103万円の壁」で検索すると、2025年の改正を反映した「123万円」や「160万円」の記事が出てきます。ところがそれも、2026年分にはもう古い数字です。令和7年度改正で動いた数字が、令和8年度改正でもう一段引き上げられたからです。
やっかいなのは、2026年8月末時点で国税庁のタックスアンサー(定番の解説ページ群)自体が「令和7年4月1日現在法令等」のまま未更新なこと。国税庁のページを見ても古い数字が表示されます。2026年分の正しい原典は、国税庁が2026年4月に出した「源泉所得税の改正のあらまし(令和8年4月)」PDFです。以下、すべてこのPDFのページ数付きで整理します。
結論の表: バイトだけの学生(2026年分・令和8年分)
| 年収(給与収入) | 超えると何が起きるか | 原典 |
|---|---|---|
| 136万円 | 親の扶養控除の対象から外れる(19〜23歳は下の「特定親族特別控除」に切替) | p.2 |
| 159万円 | 親側の特定親族特別控除が満額(63万円)から減り始める | p.2 |
| 163万円 | 勤労学生控除の対象から外れる(ただし後述のとおり、所得税では実益がほぼ消滅) | p.2 |
| 178万円 | 本人に所得税がかかり始める(基礎控除104万+給与所得控除74万) | p.1 |
| 197万円 | 親側の特定親族特別控除が完全にゼロになる | p.2 |
※金額は令和8・9年分。令和10年分以後は基礎控除・給与所得控除の一部が変わる予定です。住民税は基準が別で自治体により異なります(おおむねもっと低い年収から発生します)。
「103万円の壁」に相当するものは、2026年分では178万円の位置にあります。103万円を基準にシフトを調整している学生は、75万円ぶん損な計算をしていることになります。
仮想通貨の利益がある場合は、数字がまるごと変わる
私は現役の大学生で、仮想通貨の自動売買を実弾で運用しています(成績は毎日公開)。ここからが本題ですが、仮想通貨の利益は雑所得で、給与所得控除(74万円)がありません。利益がそのまま所得になります。
- 仮想通貨の利益だけの場合: 親の扶養は62万円、本人の所得税は104万円から(詳細はこちらの記事で整理しています)
- バイト+仮想通貨の場合: 給与所得(バイト年収−74万円)と仮想通貨の利益を合算した所得で判定します
例: バイト年収100万円+仮想通貨の利益30万円の場合。 給与所得 = 100万 − 74万 = 26万円。合計所得 = 26万 + 30万 = 56万円 → 扶養の所得要件62万円以下なので、親の扶養のままです(2026年分)。
同じ例を古い記事の数字(給与所得控除65万・扶養要件58万)で計算すると 35万+30万=65万円で「扶養から外れる」という逆の結論が出ます。二段階で改正された年は、どの年分の数字で計算しているかで答えが反転します。
勤労学生控除は、所得税では「出番がなくなった」
意外な副産物がこれです。勤労学生控除(27万円)の要件は所得89万円以下(給与のみなら163万円以下・p.2)。ところが2026年分の基礎控除は104万円なので、要件を満たせる所得(89万円以下)の人は、勤労学生控除を使うまでもなく基礎控除だけで所得税がゼロになります。89万 − 104万はマイナスなので、控除を上乗せする余地がそもそもありません。
つまり令和8年分の所得税では、勤労学生控除は実質的に空振りの制度になりました(住民税には別枠の勤労学生控除と別の基準があり、そちらでは意味が残ります。基準は自治体にご確認ください)。「勤労学生控除を使えば得」という古い定番アドバイスも、2026年分では前提から変わっています。
なぜ検索結果は古いままなのか
整理すると、こうなります。
- 令和7年度改正(2025年)で「103万円の壁」関連の数字が総入れ替え → 大量の解説記事がここで書かれた
- 令和8年度改正(2026年)でもう一段引き上げ → 反映した記事はまだ少ない
- 国税庁のタックスアンサー自体が令和7年4月時点のまま → 「国税庁で確認しました」と書いてある記事も古い数字を引いている
一次情報主義の当ブログとしても、実は今日この構造に気づいて仮想通貨版の記事を公開当日に修正しました。他人事ではありません。数字が動いた年は、解説ページではなく改正のあらまし(原典PDF)まで遡るのが確実です。
計算ページ: 学生の年収の壁 2026年分・自動計算(バイト+仮想通貨の利益を入れると、どの行に当たるかを表示)
本記事は2026年8月31日時点の公表情報(令和8年度税制改正まで反映)に基づきます。税務相談は税務署の相談窓口または税理士へ(税理士法により、無償でも個別の税務相談には資格が必要です)。詳細は免責事項をご覧ください。