本記事は法令・公的公表資料に基づく一般的な情報の整理であり、投資助言・法律相談ではありません。特定の事業者を名指しして評価するものでもありません。

「AI自動売買で月利○%」の広告を見たとき、中身の良し悪しを判定する必要はありません。技術の話に入る前に、公的なページと相手のサイトだけで確認できることが4つあり、そこで大半がふるいにかかります。登録・断定表現・出金・負けの開示の4点です。

この記事は、その4点をどこで確認するかと、暗号資産の助言に関する法律の線が2027年に引き直されるという現在地の整理です。うち自身がAIに自動売買をやらせている側なので、自分に返ってくる基準として書きます。

1. 「登録されているか」を、自分の手で引く

金融商品取引法29条は一行です。

金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない。 (e-Gov・金融商品取引法)

登録業者かどうかは、金融庁の免許・許可・登録等を受けている業者一覧で引けます。名簿はPDFとExcelで公開されていて、金融商品取引業者(投資助言・代理業を含む)と暗号資産交換業者は別ファイルです。業者名か登録番号で検索して、出てこなければそれで終わりです。

もう一つ、金融庁は無登録で金融商品取引業を行う者の名称等についてという警告リストを公開しています。平成22年1月以降に警告書を発出した相手が、国内業者・海外所在業者・適格機関投資家等特例業務届出者の3区分で載っています。ここで大事なのは、同ページ自身が付けている但し書きのほうです。

掲載されている無登録業者は、警告書の発出を行った時点で無登録営業を行っていることが確認できた者に限られています。そのため、掲載されていない者でも、無登録営業に該当する行為を行っていることがあり得ます。

つまりこのリストは「黒のリスト」であって、「載っていない=白」ではありません。使う順番は、まず登録名簿(白いほう)で確認し、無登録リストは補助です。逆順にすると、載っていないことを安心材料にしてしまいます。

なお無登録営業は行政指導で済む話ではなく、金商法197条1項4号の3により10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金(併科あり)の対象です。それだけの罰則が用意されている領域だ、という感覚は持っておいて損がありません。

2. 「月利◯%保証」は、法律が名前を付けて禁じている類型

金商法38条は、業者に対してこう定めています。

二 顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為

この条文の名宛人は「金融商品取引業者等又はその役員若しくは使用人」で、無関係な第三者には及びません。ただし、契約した個人の側から効く条文が別にあります。消費者契約法4条1項2号です。

二 物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認 (この誤認によって申込み等の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。e-Gov・消費者契約法)

こちらは相手が登録業者かどうかを問いません。「月利◯%は堅い」「元本は減りません」と言われて信じて契約した、という経緯そのものが取消しの理由になり得ます。

実務的な読み方はこうです。将来の利益を数字で保証する売り文句は、法律がわざわざ類型として名前を付けて禁じているものと同じ形をしている。 中身を検討する前の段階で、その事業者は法令の線をどう扱うかを自分から見せています。

3. シグナル配信はどこから登録が要るのか(2027年に線が引き直される)

有料のシグナル配信・売買タイミングの助言がどこから登録制なのかは、実は今、条文の上で分かりにくくなっています。

金商法2条8項11号の「投資顧問契約」の定義には、目立たない除外があります。

…口頭、文書(新聞、雑誌、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもので、不特定多数の者により随時に購入可能なものを除く。)その他の方法により助言を行うことを約し、相手方がそれに対し報酬を支払うことを約する契約

誰でも買える出版物は投資顧問契約に当たらない、という趣旨の除外です。裏を返すと、クローズドで会員限定の有料配信ほど、この除外から外れて登録の線に近づきます。「LINEグループで会員だけに配信」という形は、法的にはむしろ危ない側の形です。

一方で、同号が使う「投資判断」の定義は、条文上は有価証券とデリバティブ取引について書かれています。暗号資産の現物の売買タイミングを有償で助言する行為がここに収まるのかは、条文を読んだだけでは決めきれず、この点についての金融庁の公式見解は今回確認できませんでした(未確認)。断定は避けます。

その曖昧さを正面から埋めるのが、2026年7月15日に成立し、7月23日に公布された改正金商法です。暗号資産の規制が資金決済法から金商法へ移り、暗号資産交換業は「暗号資産取引業」として金商法の金融商品取引業に取り込まれます。そして暗号資産を投資対象とする投資助言・投資運用も、新たに業規制の対象になります(金融庁の法律案、長島・大野・常松法律事務所の解説)。

施行期日は附則1条で「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」、つまり2027年7月22日までに施行されます。無登録業者への罰則も、資金決済法時代の3年以下から金商法の水準へ引き上げられます。

読み替えるとこうなります。いま「グレーだから」で成立している暗号資産のシグナル配信ビジネスは、2027年には登録の有無で白黒がつく。 数年続く契約を今から結ぶなら、相手が登録を取りに行く気配があるかどうかは、見ておく価値のある論点です。

4. 契約前に確認する4点(チェックリスト)

確認すること 確かめ方 引っかかったときの意味
登録の有無 金融庁の登録一覧で業者名・登録番号を検索。無登録リストも確認 名簿に無ければ、その時点で判断は終わり。載っていない=白ではない
成績の検証可能性 全取引履歴か、第三者が再現できる形で出ているか。手数料込みか。期間は何年か 損益画面のスクリーンショットは、デモ口座でも画像編集でも作れる。検証できない実績は無い実績と同じ
出金の自由 出金条件・最低出金額・手数料・所要日数が事前に書いてあるか。実際に出金した人の記録があるか 「利益は出ているのに出金できない」は投資詐欺の定番の終わり方
負けの開示 損を出した月・週が、勝った月と同じ粒度で公開されているか 負けが1件も無い記録は、記録ではなく広告

補助の観点として、手数料の全体像(ツール代・月額・スプレッド上乗せ・成功報酬)を説明できるか、将来の利益を数字で断定していないかの2つを足すと、ほぼ落ちます。数字が現実的かどうかの判定は、電卓だけでできる方法を別記事に書きました。

5. うちのAIが、最初に言ったこと

当ブログの運用は、AI(Claude)に「全部任せる」と言って作らせた自動売買です。売り込みではなく記録として書きますが、そのAIが最初の日に返してきたのは、期待をふくらませる言葉ではありませんでした。書籍版の冒頭に、原文で残してあります。

「必ず勝てる完璧なツールは存在しません。なので設計思想は『期待値がプラスになりうる低コスト戦略を複数走らせ、実データで選別し、負けの上限を機械的に制御し、勝ち筋に資金を寄せ続ける』——つまりツールを完成品ではなく、自己改善し続ける運用システムとして作ります」

完璧なツールを頼んだら、完璧なツールは無いという答えが返ってきた。この一言を最初に言うかどうかが、いちばん実務的な見分け方かもしれません。

実際の数字も同じ調子です。2026年9月2日時点で、累計入金15,274円に対して評価額15,287円、損益は+13円(成績ページで毎朝自動更新)。しかも同じお金をただ積み立てていた場合には負け越しています — 2週目の週報では評価額+147円に対し、ただ積立なら5,978円で差は−558円でした(実弾運用2週間目)。上げ相場でAIが出遅れる構造はガチホとの並走データにそのまま出ています。

自分の側の負けを同じ粒度で出せるかどうか。それが、他人の「月利◯%」を疑うための最低条件だと思っています。

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本記事は2026年9月2日時点の法令・公表情報に基づきます。条文は金融商品取引法・消費者契約法、改正法は金融庁公表の法律案を参照しました。法令の解釈・適用は個別事情により異なります。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。詳細は免責事項をご覧ください。