本記事は私自身の運用の記録であり、投資助言ではありません。掲載する数字は特定期間・特定の計算条件による検証値で、将来の成果を示すものではありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。

結論を3行で。

  • AIに「自分の戦略を疑え」と言ったら、1日で8つの仮説を検証して5つを捨てた。捨てられたのは、私が一番期待していたものばかりだった。
  • 物差しを全世界株の指数(円建て・毎月同額の積立)に置くと、私の戦略は7.5年の検証で金額では+102万円勝ち、Sharpe(リスク1単位あたりの収益)では1.04対1.16で負け、Calmar(下落の深さあたりの収益)では0.73対0.59で勝っている。この位置を隠さずに書きます。
  • 否定されたのは「ショートも建てれば下げで稼げる」「パラメータを選び直せば良くなる」「もっと早く逃げれば良い」という、直感的にいちばん正しそうな3つでした。

AIに出した指示は一行だった

私の運用は、4本の移動平均のアンサンブル(価格がいくつの平均より上にあるかで持ち高を決める)にボラティリティ目標を掛けたものです。現物のみ、月1万円、毎朝クラウドが無人で判断します。

これに対して私が出した指示は一行でした。「この戦略は、全世界株の指数を毎月積み立てるのに勝っているのか。勝っていないなら、何を変えれば勝てるのかを仮説にして全部潰せ」。

返ってきたのは仮説の台帳と、7本の検証レポート(1本あたり3〜5万字)でした。形式は全部同じで、仮説 → 数字 → 結論(採用/棄却/保留)。棄却も消さずに残します(同じ仮説を二度調べないため)。以下はその要約です。

物差しをどこに置いたか

  • 期間 2019年2月22日〜2026年9月1日(7.53年)、入金は毎月1万円(合計92万円)
  • 私の戦略側は取引所の手数料・滑り・最小注文単位まで再現したうえでの数字
  • 全世界株側は円建ての配当込み(源泉税控除後)指数から実質コスト年0.10%を日割りで引き、毎月全額を投資
  • 税は両方とも引いていません(税引前)
運用 CAGR 年率ボラ 最大下落 Sharpe Calmar 最悪の12か月 7.5年の損益
私の戦略(現物・買いのみ) +40.4% 39.6% -42.8% 1.04 0.94 -30.4% +220.6万円
ビットコインをただ積み立て +55.8% 64.6% -71.1% 1.00 0.78 -62.9% +392.1万円
全世界株の指数を積み立て +18.7% 15.8% -33.9% 1.16 0.55 -14.0% +118.3万円

これは実弾の成績ではありません。同じルールを過去の日足に当てた検証値です(実弾は2026年8月19日に始めたばかりで、まだ2週間分しかありません。そちらは成績ページに毎朝そのまま出ています)。

読み方は3つあります。

  1. 金額では勝っている。 同じ92万円を入れて+220.6万円対+118.3万円、差は+102万円。
  2. リスク1単位あたりでは負けている。 Sharpeは1.04対1.16。ボラは2.5倍、リターンは2.2倍。取ったリスクの割には、向こうの方が効率が良い。
  3. 下落の深さあたりでは勝っている。 Calmarは0.94対0.55。Sharpeは上へのブレも下へのブレも同じように罰するので、たまに大きく上へ跳ねる型の戦略を構造的に低く評価します。なおCalmarは集計の起点で変わり、移動平均の窓の長い方に評価開始をそろえた別集計(7.25年)では0.73対0.59。どちらで測っても順位は同じです。

そして一番効くのは最後から2列目です。最悪の12か月は-30.4%対-14.0%。月1万円の積立を続けられるかどうかは、たぶんこの行で決まります。

8つの仮説と、その結末

# 何を疑ったか 結論 一行の根拠
H1 下げ相場では売りも建てる 棄却 売り側は7.5年でネット-44.4%pt。建玉金利をゼロにしても値動きだけで-17.2%pt負ける
H3 移動平均の本数と長さを選び直す 維持(変更なし) 2,366通りの格子で、前半の最良は後半で下位17%。上位k件を選ぶ戦略はkをどう変えても「選ばない」に負ける
H4 銘柄を増やして分散する 検証中 ビットコイン単独のSharpe 0.84に対し、ETHと半々で0.95。8つのうち唯一リスク調整後を改善した
H5 下落を検出してもっと早く逃げる 棄却 67構成のうちSharpeが改善したのは7つだけ、中央値は-0.05。退避は平均39日早くなったのに損益が増えない
H5’ 下げたあと早く買い戻す 保留 最大下落を悪化させずにCalmar 0.94→1.10。ただし効いた場面は3つだけで、その半分が2020年3月
H9 海外の資金調達率をシグナルに使う 保留 40検定でリターンの予測力はゼロ通過。価格だけで作った内製版との差は5.8年で7,779円
H11 この優位はビットコイン固有の偶然か 一般的(頑健) 10市場すべてで最大下落が浅くなった(中央値38.7pt)。ただしCAGRが上がったのは3市場だけ
H12 強制停止(キルスイッチ)の水準は妥当か 現行値のまま 7.5年2,748判定日で発動0回。3年以内に鳴る確率4.0%=約75年に1回

「棄却」は数字で否定されたもの、「保留」は数字は出たが採用の条件を満たさなかったもの、「維持」は変える理由が見つからなかったものです。

一番期待していた仮説が、一番はっきり否定された

H1(下げ相場で売りも建てる)は、私が個人的に一番やってほしかった案でした。結果はこうです。

運用 CAGR 年率ボラ 最大下落 Sharpe 最悪の12か月 7.5年の損益
現行(買いのみ) +40.4% 39.6% -42.8% 1.04 -30.4% +220.6万円
ビットコインをただ積み立て +55.8% 64.6% -71.1% 1.00 -62.9% +392.1万円
買い+売り(等倍) +25.6% 42.6% -52.3% 0.73 -43.8% +92.9万円
全世界株の指数 +18.7% 15.8% -33.9% 1.16 -14.0% +118.3万円

売りを足すと、金額でも全世界株の指数に25.4万円負けます。しかも最大下落は-42.8%から-52.3%へ深くなる。「下げで稼げる分、下げに強くなる」はずが、逆でした。

ここから読み取れる6つのこと

  • 「ショートを足せば下げでも稼げる」は数字で否定された。 少なくともこの7.5年のビットコインでは、コストを全部ゼロにしても値動きだけで負けます。
  • パラメータを選び直す期待値はマイナス。 前半の成績と後半の成績の順位相関は負(Sharpe -0.30 / Calmar -0.61)でした。「過去に一番良かった設定」を選ぶ行為が、体系的に損をする側に回ります。
  • 早く逃げるほど負ける。 退避を早める67の作り方で、遅れと成績の相関は-0.63。本番の下げで+34.4pt稼いでも、空振りで-36.0pt返していました。
  • 資金調達率に方向の予測力は無い。 「資金調達率が高い=天井、マイナス=底」という語りは、40検定で1つも統計的な線を越えませんでした(翌20日のボラの予測力だけは残りました)。
  • この戦略はビットコイン固有の偶然ではない。 同じルールを一文字も変えずに10市場へ当てて、最大下落は10市場すべてで浅くなりました。ただしリターンを増やす道具ではありません(CAGRが上がったのは3市場だけ)。
  • キルスイッチは75年に1回。 7.5年の全2,748判定日で一度も発動せず、最も近づいたときでも閾値まで6.7pt(2.2σ)ありました。同じ式をただの積立に当てると10回鳴ります。

次に検証するもの

  • 分散(H4): 銘柄を1つ増やすだけでリスク調整後が改善した唯一の案です。ルールの変更も新しい口座も要りません。
  • 復帰(H5’): 「下げたあと、深い下落を悪化させずに早く買い戻す」設計は作れました。ただし過去7.5年で効いた場面が3つしかなく、直近4年5か月は一度も条件を満たしていません。判定できないので保留です。

いずれも結論が出たら、研究ノートに行を足していきます。

この研究の限界(先に書いておきます)

  • 7.5年ぶんしかありません。この期間はビットコインにも全世界株にも極めて有利でした(年率+55.8%と+18.7%)。水準そのものは将来の期待値ではありません。
  • 本格的な弱気相場は2回だけ。「大下落で浅く済む」という中核の主張は、実質2〜3事例の上に乗っています。
  • 税引前です。実際の手取りはここから減ります。
  • そして全部バックテストです。実弾で確かめられているのは、まだ2週間分だけです。

数字の一覧は研究ノート(公開版)にまとめました。今後の検証結果もここに追記していきます。


本記事は投資助言ではありません。特定の暗号資産・金融商品・指数の売買を推奨するものではなく、掲載した検証値は将来の成果を保証しません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。詳細は免責事項をご覧ください。