本記事は私自身の運用の記録であり、投資助言ではありません。掲載する数字は特定期間・特定の計算条件による検証値で、将来の成果を示すものではありません。暗号資産は価格変動により損失が生じるおそれがあります。

結論を3行で。

  • 戦略の中身をいじる仮説を11個検証して、全世界株の指数のSharpe(リスク1単位あたりの収益)を一度も超えられなかった。
  • 12個目で初めて超えた。それは毎月の積立を、この戦略と全世界株で半分ずつに分けるだけという、戦略の中身を1文字も変えない方法だった。
  • ただし代償がある。7.5年の検証で金額は50.9万円少ない。「指数にSharpeで勝つ」確率も64%で、五分に近い。まだ実行していません。

11個やって、全部だめだった

このブログでは、運用を任せているAIに「自分の戦略を疑え」と言い続けた記録を研究ノートに公開しています。9月2日までに検証した仮説はこうでした。

売りも建てる(棄却)。移動平均の本数と長さを選び直す(変えない方が良い)。下落を検出して早く逃げる(棄却)。週足のトレンド確認を重ねる(棄却)。海外の資金調達率をシグナルに使う(保留)。入金のタイミングを分ける(棄却)。判断する時刻を変える(変えない方が良い)。注文の出し方を工夫する(改善の余地は年+0.02%しか残っていなかった)。

直感的にいちばん正しそうなものから順に否定されていきました。 そして11個やっても、Sharpeは1.04のまま。全世界株の指数は1.16です。

12個目は、戦略の外にあった

12個目の仮説はこうでした。「毎月1万円を全部この戦略に入れるのをやめて、全世界株と分けたらどうなるか」。

運用 CAGR 最大の下落 Sharpe Calmar 最悪の12か月 損益
いまのまま(暗号資産100%) +40.4% -42.8% 1.04 0.94 -30.4% +220.6万円
全世界株の指数だけ +18.7% -33.9% 1.16 0.55 -14.0% +118.3万円
半々にする +31.2% -27.9% 1.18 1.12 -17.3% +169.7万円

2019年2月から2026年9月まで、毎月1万円ずつ積み立てた場合の検証値です(手数料込み・税引前)。

半々にすると、CAGR・最大の下落・Sharpe・Calmar・損益の5つで、指数だけを持つより良くなります。 特に効くのが下落の深さで、42.8%から27.9%へ。指数だけを持つ場合(33.9%)よりも浅くなります。最悪の1年の負けも30.4%から17.3%へ半減します。

リスクを下げると成績も下がる、という当たり前の関係が、ここでは成立していません。 それが混ぜることの効果です。

なぜ効くのか、を1回間違えた

最初、私はこう理解しました。「2つの値動きの相関が0.24しかないから、混ぜるとブレだけが打ち消し合う」。

これは半分しか正しくありませんでした。相手を全世界株以外にも広げて、金・米国株・日本株・米国債・REIT・現金の9種類で同じことを試したら、逆の結果が出たからです。

いちばん相関が低い相手が、いちばん悪い相手でした。 米国債(相関0.04)とREIT(0.05)は、混ぜても成績が上がらないどころか下がります。

最終的な成績との対応を測ると、相関の低さが効いているのは0.06ぶん、相手自身の強さが効いているのが0.93ぶんでした。全世界株が良い相手なのは、相関が低いからではなく、全世界株そのものが強いからです。弱いものを混ぜるのは分散ではなく、ただの減量でした。

金だけは、過去7.5年の数字が全世界株より良く出ます。ただしこの7.5年は金の歴史の上位5%にあたる当たり年でした(7.5年の窓を過去に遡って並べると、今の窓はSharpe 1.44、中央値は0.50)。長期の平均に戻して計算すると、勝率は72%まで落ちます。これは私が「採用を見送る」と判断した別の仮説(77%)より低い数字です。同じ基準を当てるなら、金は見送りです。

代償を書きます

良い数字だけ書くと嘘になるので、都合の悪い方も書きます。

金額では50.9万円少ない。 220.6万円が169.7万円になります。これは「この7.5年、ビットコインが年率41.6%だった」ことの裏返しです。上がり続けるものを半分に減らせば、上がったぶんの取り分は減ります。

ただし、この前提を外すと結果は逆転します。ビットコインの上昇率をゼロに潰して計算し直すと、半々にした方が儲かります。つまりこの50.9万円は「過去がこうだったから」の数字で、将来の期待値ではありません。

「指数にSharpeで勝つ」確率は64%です。 ブートストラップ(過去の値動きを組み替えて何度も試す)で測ると、五分に近い勝負です。Calmarで測れば87%になりますが、指標を選んで良い方を言うのはずるいので、両方書きます。

何もしない、も選択肢として残っている

いま決めかねています。

半々にすれば、リスク1単位あたりでは初めて指数に並びます。でも、この戦略を作った動機は「指数より増やしたい」でした。金額で負ける構成を選ぶのは、目的を半分あきらめることでもあります。

一方で、暗号資産に100%置いている状態は、7.5年の検証で最大42.8%の下落を経験しています。実際にその瞬間が来たとき、私が耐えられるかどうかは、検証では分かりません。

決めたら、決めた理由と一緒にここに書きます。

検証の限界

  • 期間は7.5年ぶんで、本格的な弱気相場は2回しか含まれていません
  • この期間は暗号資産にも全世界株にも極めて有利でした。水準そのものは将来の期待値ではありません
  • 税引前です。実際の手取りはここから減ります(暗号資産の利益は雑所得で、税金の話にまとめました)
  • すべてバックテストです。実弾で確かめられているのは2026年8月19日以降の分だけです

数字の一覧は研究ノートに、日々の実弾の記録は成績ページにあります。