本記事は公開情報と筆者自身の記録・計算に基づく一般的な情報の整理であり、個別の税務相談ではありません。ご自身の申告は税務署または税理士にご確認ください。

私は現役の大学生で、AIに作らせた自動売買botを実弾で運用しています(成績は毎日公開)。自動売買を調べると必ず出てくるのが「取引件数が膨大になって確定申告が詰む」という話です。年間3,000件で詰んだ、という体験記もあります。

実際どうなのか。自分のbotと同じ判定規則で1年分を再現し、税金の計算まで両方式でやってみました。

まず実態: 「毎日判定」しても、取引は年75〜93件だった

うちのbotは毎朝1回、目標配分と現在の持ち高を比べて、ズレが一定幅(2%)を超えたときだけ発注します。この実運用と同じ規則を過去の相場データに当てて1年間回すと:

年 取引件数 内訳
2024年 93件 買い54・売り39
2025年 75件 買い44・売り31

「毎日判定する」と「毎日取引する」は別物です。大半の日は判定した結果、何もしません。年3,000件になるのは1日に何度も売買する高頻度型の話で、日次のリバランス型なら手計算はつらいが、詰むほどではない件数に収まります(それでも75件を電卓でやりたくはありませんが)。

本題: 同じ取引でも、計算方式で所得が変わる

仮想通貨の所得計算には「総平均法」と「移動平均法」の2方式があります(国税庁の暗号資産FAQ)。上の再現取引を、まったく同じ取引のまま両方式で計算した結果:

以下は実際の運用成績ではなく、過去の価格データを使った机上のシミュレーションです(税額計算の差を見るための例であり、実績値ではありません)。

(シミュレーション) 総平均法 移動平均法 差
2024年(上昇相場の年) +12,890円 +30,328円 17,437円
2025年(下落・レンジの年) −5,593円 −5,584円 10円

※月1万円入金・年初残高ゼロから開始・手数料込み。実運用と同じ判定規則を過去データに当てた再現計算です(botの収益性の宣伝ではありません。2025年は入金12万円に対し年末評価11.4万円の含み損でした)。

2024年のケースでは、同じ取引・同じ経済的結果なのに、申告する所得が2.3倍違います。年間12万円しか入金していない規模でこれです。

なぜズレるのか、そして「どちらが得」ではない理由

  • 移動平均法: 買うたびに平均単価を更新し、売った時点の平均単価で原価を計算する
  • 総平均法: 1年が終わってから「年間の買いをぜんぶ平均した単価」で全売却の原価を計算する

年の前半に安く買って高く売り、後半に高く買った場合、総平均法では後半の高い買いが前半の売りの原価まで引き上げるため、その年の所得が小さく出ます。ズレた分は消えるわけではなく、翌年に持ち越す原価に化けて、いずれ帳尻が合います。生涯の合計では同じです。

ではどうでもいいかというと、そうではありません。学生なら親の扶養のライン(利益62万円)や本人の課税ライン(104万円)をどの年に跨ぐかが方式次第で変わりうる、ということだからです。「生涯合計は同じ」でも、特定の1年にいくら認識されるかは生活に直結します。

実務で知っておくこと3つ

  1. 何も届け出なければ総平均法になります。移動平均法を使いたい場合は「所得税の暗号資産の評価方法の届出書」の提出が必要で、期限は暗号資産を初めて取得した年分の確定申告期限まで(国税庁 A1-20)。私は2026年に初取得なので、2027年3月15日までに決めます
  2. 売却しなければ所得は発生しません。ちなみに私の2026年のbotの実績は、ここまで買い2件・売り0件なので所得0円です。ただし日本円に戻さなくても、暗号資産同士の交換や決済利用は課税対象になります(詳細は別記事の罠④)
  3. 損失が出た年は、他の所得と通算できず、翌年への繰越もできません(2026年分の現行制度。雑所得のため)。2025年の再現計算のようなマイナスは、税金上は「なかったこと」になるだけです

計算自体は、取引所が発行する年間取引報告書と国税庁の計算書(Excel)で総平均法なら比較的機械的にできます。今回の再現計算も、やっていることはこの表計算と同じです。

面倒になるのは、複数の取引所を使っている場合(全部を1つの計算にまとめる必要がある)、方式を移動平均法にした場合(買うたびに単価を更新するので手作業だと事故りやすい)、そして件数が数百を超える場合です。この領域には損益計算サービスがあり、取引履歴を取り込んで自動計算してくれます(Cryptact など。無料枠あり)。私自身は2026年分の売却がまだゼロなので使っていません — 使う段になったら、使用感をこのブログに書きます。判断に迷う論点があるなら税理士に相談するのが確実です。

まとめ

  • 日次リバランス型の自動売買なら、取引は年100件未満。詰むのは高頻度型
  • 方式の差は相場つき次第で「ほぼゼロ」から「所得2.3倍」まで振れる。差は翌年以降に持ち越されるだけだが、扶養や課税ラインを跨ぐ年がずれるのは実害
  • 初取得の年の申告期限までに方式を決める。届け出なければ総平均法

計算ページ: 総平均法と移動平均法を同時に計算する(登録不要・ブラウザ内)

計算ページ: 利益が確定したら税金はいくら増えるか(給与+雑所得・2026年分)


本記事は2026年9月1日時点の制度(令和8年分)に基づきます。再現計算は筆者の運用規則を過去データに適用したもので、将来の成績を示すものではありません。個別の税務相談は税務署または税理士へ。詳細は免責事項をご覧ください。